Technical Lecture 2024 芦澤竜一 氏 |開催報告
Technical Lecture 2024
芦澤竜一 氏 |開催報告
イベント名:Technical Lecture 2024
日時:2024年6月4日 15:00-17:00
会場:九州大学伊都キャンパスイースト1号館A215
建築やデザインの分野で活躍する専門家を迎え、テクニカル理論・手法を説く公開型レクチャーシリーズ、BeCATのテクニカルレクチャー。課題の捉え方や解決へ向けたデザイン方法を学び、発想や企画・デザイン力の修得を目指します。
今回のゲストは、サスティナブルな建築を追求し、ディスカッションや試作を繰り返しながら自然環境と呼応する建築を目指す芦澤竜一氏。
「GROUNDING-地球・人間・建築」をテーマに、レクチャーいただきました。
芦澤竜一建築設計事務所を主宰しておられながら、滋賀県立大学環境化学部環境環境建築デザイン学科の教授でいらっしゃる芦澤さん。
プロジェクトに取り掛かる前には、いつも「建築の起源」について考える、という芦澤氏。物事の捉え方や考え方、取り組み方の原点を伺うことで、芦澤氏のユニークな建築設計の手法が、何かを訴えているかのように感じます。
「地元住民と観光客が交流できるような東屋を、琵琶湖奥島の流木を使用して作って欲しい」というリクエストから始まった滋賀県立大学の研究室と協働しているプロジェクト。
2018年の大雨で、琵琶湖沿岸に大量の木が漂流している様子を目の当たりにし、それらを構造体として使えないだろうかと思ったことがきっかけだったといいます。
500本ほどの流木を27パターンに分けて類型化。柱も掘立で成り立ち、中央部分には何もないヴォイドのような空間をあえて立ち上げました。
「立ち上げから2、3年が経過した今は、流木が腐食するなど劣化してきてはいるが、そういったものをメンテナンスしながら使い続ける。建築というのは作ったら終わりではなく、ずっと続いているわけです。」

滋賀県東近江での合気道の道場と住宅のプロジェクトでは、「太郎坊山を背負う敷地には、自然物と呼応するような建築の構え方がいいのではないか」と考え、緩やかな局面の屋根勾配が決まったといいます。
外壁は泥団子で、内壁は左官を仕上げた後に『チョップ仕上げ(!!)』。
コテを空手チョップのように使う芦澤氏オリジナルの手法だそうで、結果的には平面に仕上げるよりも表面積が大きくなり、乾くのが早い上に調湿効果が上がるといいます。
「縄文式の火炎土器も、紋様には装飾的な目的もあるのですが、早く乾かすという効果も狙っていたようです」と、歴史からヒントとアドバイスをもらいながら設計を進める芦澤さん。

他にも多様でユニークなプロジェクトを多数紹介いただき、吸い込まれるようにみんなが聞き入っている間に、レクチャーはあっという間に終了時間を迎えてしまいました。
芦澤さんの「建築を作る上での根源的な人間の問い」。
そして、レクチャーのテーマ「Grounding」は、建築があたかも地面から生えてきたような”自然な人工物”であるかのように感じられることを意図しているのではないか、そのように思えてきました。
会場に集まった学生からも、活発な質疑が飛び交いました。
「プリミティブな建築に興味を持ち始めたのはいつ頃でしょうか?」という問いに、今の芦澤さんを形成したと言っても過言ではない経験談が引用されました。
小学生の頃は学校にあまり行っていなかったが、当時の担任の先生からはそれを咎められることもなく、竪穴式住居を作らされた、といいます。レクチャーを受けていた誰もが、この経験と記憶が、芦澤さんに影響を与えていることに疑いを持たなかったはずです。
「3dプリンターを使用して設計を進めることに対してはどう思うか」との問いに対しては、「つくる、という行為に喜びを感じるので、3dプリンターなんかに作る喜びを奪われたくない」と即答する芦澤さん。これはBeCAT教師陣は思わず膝を打ち、そして学生にとっては新鮮な回答だったに違いありません。
芦澤竜一氏の活動は、BeCATの活動と親和性が高いことがレクチャーを通してよくわかりました。スタジオを進める学生たちのみならず教員もまた大変な刺激を受けました。
芦澤竜一(Ryuichi Ashizawa)
1971年神奈川県生まれ
1994年早稲田大学理工学部建築学科卒業
1994年安藤忠雄建築研究所勤務
2001芦澤竜一建築設計事務所 主宰
2015年・2024年滋賀県立大学環境科学部環境建築デザイン学科教授

イベント名:Techinical Lecture 2024 ゲスト:建築家芦澤竜一さん
開催日時:2024年6月4日(火)15:00-17:00
形式:一般公開(対面+オンライン)
会場:九州大学 伊都キャンパスイースト1号館A215(コミュニティ・ラーニング・スペース)
(福岡市西区本岡744)
対象:九州大学学生、建築教育に関心ある一般の方、BeCATでの学びに関心ある学生や一般の方
定員(対面):学生30名程度(オンラインは定員はございません)
参加費:無料
ゲスト|芦澤竜一氏
参加教員|末廣香織(副センター長)、末光弘和(デザインラボ長)、吉良森子(担当教授)、百枝優(担当准教授)
報告|BeCAT 楠元彩乃
