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BeCAT 応用プログラム 2025|最終発表会

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BeCAT 応用プログラム2025|最終発表会

九州大学人間環境学府の修士2年生が取り組んできたBeCAT応用プログラム。
当プログラムでは、自ら社会実装プロジェクトに関わり、研究発表を行うことで、研究力・企画設計力・マネジメント力を身につけることを目標とし、今年度は9名の学生が取り組んできました。(内1名は協力学生)。

1年間を通して、取り組んできたプロジェクトと研究の集大成として、2月19日に各プロジェクトをまわるツアーと、最終発表会が行われました。
会場には、プロジェクトパートナーやゲストの方にも参加いただきました。

ツアーの様子
ツアーの様子

発表者01
繁藤 大地「南小国町かけらプロジェクト -背板の建築的利用による祝祭と循環の実験-」
BeCAT x 穴井木材工場

熊本県南小国町の新嘗祭における仮設建築「欠片の葉」として、地産業で生まれる端材「背板」を構造材とした空間を立ち上げ、地域の景色を生み出し、1月のどんどやで燃やすことにより祝祭行事として昇華することを目指したプロジェクト。現地の製材所である穴井木材工場との共同で進められました。
建築資材としては利用価値がなく、従来の製材プロセスでは燃料にしかならなかった背板に新しい価値を見出すため、ステンレスベルトで束ねてジョイントする独自のシステムを考案しました。束ねる背板の一部を柱とすることで、水平・垂直に展開させ、木立の中を歩くような空間創出を試みました。不整形な素材を構造に乗せるため、構造実験を含む試行錯誤を重ね、微細な陰影や木漏れ日を生む建築の可能性を提示しました。
建築としての強度面などの課題が残る一方で、スツールなどの家具スケールでの展開可能性も示しました。

繁藤大地
繁藤大地

発表者02
樋口 夕季乃「またいちの塔プロジェクト」
BeCAT x またいちの塩

セルフビルドによる環境負荷を減らす集熱塔。糸島にある「またいちの塩」との共同プロジェクトで、5年に渡る活動の集大成となりました。環境負荷低減と製塩効率化を目指し、太陽光を効率的に集熱するためのパネル角度やセルフビルドしやすい形などの試作を重ね実装しました。
研究面では、実装された集熱塔の効果について加熱効果や塩の品質効果の検証を行い、塩の生産量の変化予測や、省エネルギーの観点からも評価しました。またいちの塔は、観光地のシンボルとして「共感」を生むアイコンとなり、来場者が製塩に関心をもつきっかけにもなっています。

樋口夕季乃
樋口夕季乃

発表者03森 颯太・Lee Yein「型枠反転 -背板型枠転用プロジェクト-」
BeCAT x アスミオ.

丸太の製材時に生じる「背板」をコンクリートの型枠として使用し、打設後はその型枠を反転させて屋根材へとアップサイクルする循環型工法を提案しました。建設業界の廃棄物削減と未利用材の活用をテーマとしたプロジェクトであり、福岡県産材を用い、背板特有の樹皮の質感をコンクリート表面に転写することで、豊かな表情を持つ五角形のパビリオンを提案しました。
自らの手で型枠をつくり、コンクリートを打設し、外した背板を磨き屋根材として仕上げ、多くの時間と手間をかけながら一つの循環のあり方を示しました。これを実際の建物に応用する際には、RCと木の使用量のベストミックスなど、どのような価値や可能性があるのかを示すことで、より説得力が増していくプロジェクトになるでしょう。

森颯太
森颯太

発表者04
濵﨑 裕理・井上 大輔「AKARIDO_個々の困りごとに適応する木製建具」
BeCAT x 前田建具製作所

現代の規格化された窓に後付けできる「視線と日差しをカスタマイズできる木製建具」を提案したプロジェクト。福岡未踏Growの採択プロジェクトとしてWEBアプリを開発し、ユーザーが日射遮蔽や眺望の抜けをシミュレーションしながら、自分に最適な木製建具をカスタマイズ・設計できる仕組みを構築しました。
実際に大学内の研究室へプロトタイプを設置し、西日による眩しさを解消しつつ、木漏れ日のような快適な空間を実現しました。開発したアプリではシミュレーションで得られた結果をCNC加工のカットデータとしてダウンロードでき、セルフビルドの自律性と精度を両立させました。実装された研究室の先生からも高い満足度を得、ブラインドに代わる新しいビジネスモデルとしての可能性について高い関心が寄せられました。

濵﨑裕理・井上大輔
濵﨑裕理・井上大輔

発表者05
先本 凌「NEST -土と産業副産物から生まれる人の巣-」
BeCAT x LibWork

建設・産業副産物等を用いた3D PRINT用素材(ソイルジオポリマー)の開発プロジェクト。日本で年間約8000万㎥発生する建設残土と、製鉄や火力発電により生まれるFA/スラグをアルカリ溶液で固めることで、セメントを使用しない新しいソイルジオポリマーを開発しました。気温の影響や流動性、施工性などで失敗を繰り返しながら試行錯誤し、安定した積層が可能な配合を開発し、柱を3Dプリント。タープと組み合わせた「NEST」を制作しました。
最先端技術と原始的な土の質感を融合させ、少人数で空間を創出するデジタル・ファブリケーションの可能性を追求し、今後の社会的な発展性についても提案しました。

先本凌
先本凌

発表者06
浅岡 柊・松野 真翔「Offcut Oasis-未価値を心地へ 端材で構築されたオアシスのような建築」
BeCAT x SANU

奄美大島の宿泊施設において、建築過程で生じるプレカット端材を活用した屋外空間を創出するプロジェクトです。4mの材木を910ピッチでカットした場合に残る360mmの端材を「レンガ」のように積み上げ、独自のボルト接合システムで直径約6メートルの円形シェル構造の空間をつくりました。
奄美の強い日射や海風を和らげる構造解析やライフサイクルコストの評価も行い、新材利用と比較してCO2排出量を26%低減しました。計算されたシンプルさと美しさが極めて高く評価され、地元の素材をその場所で循環させる社会実装のモデルケースとして注目を集めました。

浅岡柊・松野真翔
浅岡柊・松野真翔

それぞれの発表後、センター長賞を決めるための審査が行われました。
今回の最終発表会は、審査員から「これまでで最も選考が難航した」と言われるほど全体的なレベルが高く、学生たちが取り組んできたプロジェクトの集大成として、非常に密度の濃い内容でした。

最終的に5年にわたるプロジェクトを引き継ぎ、施主と共に現場で施工を行い、建物を完成させた高い実行力と、「その場所・その施主」でしか成立しない固有の物語性を持ちつつ、数値解析や成分分析による工学的な根拠を両立させている点が決定打となり、「またいちの塔」の樋口 夕季乃さんが、第4回応用プログラムセンター長賞に選ばれました。

センター長賞

BeCAT応用プログラムの期間で、彼らは自ら社会実装プロジェクトの最前線に立ち、施主や施工者といった多様なステークホルダーと対話を重ねる中で、「研究力・企画設計力・マネジメント力」を実践的なスキルとして取得してきました。
また、個々のプロジェクトは独立したテーマでありながら、現場では学生同士が互いの制作や重労働を伴う施工を支え合う姿がとても印象的でした。

最終講評会の最後には、教員たちから、卒業後もこの地で培った経験と独自の視点(BeCATマインド)を失わず、「新しい世の中を切り開いていく役に立ってほしい」という強い期待とエールが送られました。ここで得た「自ら考え、形にし、社会に問う」という姿勢は、彼らが歩むこれからの道のりにおいて、確かな指針となるはずです。


審査の様子

審査の様子
審査の様子
審査の様子

BeCAT応用プログラム最終講評会

日時:2026年2月19日 15時〜18時
場所:伊都キャンパスイースト1号館A-215教室

講評教員:
重松象平(BeCATセンター長)
末廣香織(BeCAT副センター長)
末光弘和(BeCATデザインラボ長)
吉良森子(BeCAT担当教授)
百枝優(BeCAT担当教員)
出水文二(BeCAT担当教員)
尾崎明仁(環境系教員)
住吉大輔(環境系教員)
藍谷綱一朗( D-Be教員)

参加学生:
繁藤大地 樋口夕季乃 森颯太(協力:Lee Yein) 
濵﨑裕理 井上大輔 先本凌 浅岡柊 松野真翔

集合写真

2025年度 BeCAT応用プログラムスケジュール

2024年11月6日 テーマ発表会
2024年12月24日 着手審査会
2025年5月20日 中間発表会
2025年10月7日 中間発表会
2026年2月19日 最終講評会

経緯
それぞれの案が1年間半の期間で試行錯誤を重ねてきた
報告|BeCAT 梅崎真理子

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