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Design Lecture 2025 o+h 大西麻貴氏+百田有希氏 |開催報告

REPORT

Design Lecture 2025
o+h 大西麻貴氏+百田有希氏 |開催報告

o+h lecture

イベント名:Design Lecture 2025
「A Living Whole(生きた全体)」大西麻貴+百田有希/o+h
日時:2025年8月1日(金)17:30-19:00
会場:九州大学伊都キャンパス


建築やデザインの第一線で活躍する専門家を迎え、デザイン理論や方法論を共有する公開レクチャーシリーズ「BeCAT Design Lecture」。課題の捉え方から解決へのアプローチまで、発想・企画・デザイン力を育むことを目的としています。

今回登壇したのは、学生時代から注目を集めてきた建築家ユニット・大西麻貴+百田有希/o+h。これまでの軌跡と最新プロジェクトを交えて、「生きた全体」というテーマが語られました。

冒頭では、BeCAT 副センター長の末廣教授が二人との出会いを紹介。大学4年生の頃、大西さんが福岡の学生デザインレビューで一位を獲得し、その後のワークショップでは百田さんと共にアイランドシティ中央公園のフォリーを設計・実現した―そんな原点が語られました。

アイランドシティ中央公園にある二人が学生時代に設計したフォリー。伊東豊雄さんのワークショップでした。

「生きた全体」を探る建築実践

お二人のキャリアは、東日本大震災の仮設住宅での復興支援からスタートしました。まちの人と一緒に建築をつくることの重要性を感じ、現在は日本橋の通りに開かれた事務所で、地域と建築の関係を日常的に紡いでいます。

「違いを認め、違いを大切にする」空間

最初に紹介されたのは、奈良県のグッドジョブセンター。障害のある方とともに「社会の中に仕事を生み出す拠点」をつくるプロジェクトです。
クライアントの理念である「違いを認め、違いを大切にする」を共有し、誰もが居心地よく過ごせる空間を構想。千鳥状に壁を配置する幾何学的なルールを用いつつ、そのルールを“崩すこと”を許容することで、多様な居場所をつくり出しました。
千鳥の壁は「隔てる」と「つなぐ」が同時に起こる特性を持ちます。この経験を通して、「インクルーシブに考える」とは何かを深く学ぶ機会になったと語ります。

続いて、町産材を2年半乾燥させる期間を使って住民対話を重ねた多賀町中央公民館、町の自然環境や震災遺構と建築を結び直す熊本地震震災ミュージアムKIOKUなど、多様なプロジェクトが紹介されました。建築を通して出会った人・風景・気づきを、二人それぞれの視点で丁寧に語ってくれました。

ひとつのものに多重の意味を見出す

日本建築学会賞を受賞した「シェルターインクルーシブコパル」も紹介されました。このプロジェクトには、BeCATの設計助手 福田哲也も携わっています。
山形・蔵王連峰の麓につくる全天候型のインクルーシブ遊び場。「ひとつのものに多重の意味を見出す」ことがコンセプトで、車椅子用スロープが子どもたちの“駆け上がる丘”になり、ベンチが木琴になり……機能が重なり合うことで、多様な利用者が思い思いに楽しめる空間が生まれました。

大阪・関西万博「休憩所1」では、デッドストックの布を使い、半年だけの“生き物のような建築”を構想。風と光が揺らぐ祝祭的な空間のなか、ひんやりとしたハンモックは子どもたちに大人気でした。現在進行中の桜島義務教育学校では、御岳や錦江湾の地形を学びの風景として取り込み、郷中教育文化を体現する分棟形式の校舎を、地域との対話を重ねながらつくっています。

シェルターインクルーシブコパルや、万博休憩所1の写真をみながら、マイクを渡しながらレクチャーが進む

建築への思いと、これからの社会像

レクチャーでは、o+hの建築観やプロジェクトに向かう姿勢も語られました。会場には学生だけでなく一般参加者も多く、質疑応答は活発に進みました。

質問をする学生

「建築の授業で焦りを感じる」という学生には、 「建築は時間をかけて勝負できる。悲観するのは70歳になってからでいい。」(百田さん) 「建築には入り口がいくつもある。自分の得意なところから始めていい。」(大西さん) と励ましの言葉が贈られました。

BeCAT 担当教員 百枝 優は、二人の建築が「ポエティックな発想とテクニックの確かさが絶妙の掛け合いで両立している」とコメント。ユニットとしての協働性が生む力を語りました。

最後に、人口推移のグラフを示しながら百田さんは述べます。 「私たちは、明治維新に匹敵する変革期の入口にいるのかもしれない。」 福祉を例に挙げ、分断されがちな制度のなかで、「誰もが集まれる場所を町の中に生み出すこと」、そして「建築から新しい社会や豊かな暮らしを描いていくこと」。その役割を改めて示し、レクチャーは締めくくられました。


大西麻貴+百田有希 / o+h
共に京都大学工学部建築学科卒業、それぞれ修士課程修了後、2008年より大西麻貴+百田有希 / o+h として活動をはじめる。主な作品にシェルターインクルーシブプレイスコパル(2022年)、熊本地震震災ミュージアムKIOKU(2023年)、Good Job! Center KASHIBA(2016年)ほか。主な受賞に2023年日本建築学会賞作品賞、第34回村野藤吾賞、第64回BCS賞、2024年度JIA日本建築大賞ほか。


イベント名:Design Lecture 2025|o+h 大西麻貴氏/百田有希氏「A Living Whole(生きた全体)」 

開催日時:2025年8月1日(金)17:30-19:00
形式:一般公開
会場:九州大学伊都キャンパス イースト1号館大講義室II
対象:九州大学学生、建築教育に関心ある一般の方、BeCATでの学びに関心ある学生や一般の方
参加教員|末廣香織(副センター長)、末光弘和(デザインラボ長)、吉良森子(担当教授)、百枝優(担当准教授)

ポスター

報告|梅崎真理子
編集|サーズ恵美子

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