1. HOME
  2. REPORT
  3. BeCAT 2026応用プログラム企画提案会|開催レポート

BeCAT 2026応用プログラム企画提案会|開催レポート

REPORT

BeCAT 2026応用プログラム企画提案会|開催レポート

修士学生が、自らプロジェクトリーダーとなり、社会課題プロジェクトに取り組む応用プログラム。
2025年度の秋スタジオで事前準備を経たものも含め、2026年度は合計7つのプロジェクトが進行します。
新年度、本格的に2026年度の応用プログラムをスタートさせるための企画提案会が、4月24日に開催され、7プロジェクト8名の学生がプレゼンテーションを行いました。


プロジェクト1|BeCAT × Mycelium Architecrute Lab
発酵建築 〜部屋から始まる微生物との共生〜

齋藤巧

現代の無菌環境による子どもの免疫力低下と、キノコ農家が抱える廃菌床の廃棄問題を同時に解決することを目指すプロジェクト。
糸島市のキノコ農家からでる廃菌床を再利用し、多孔質で微生物を保持しやすい菌糸(マイセリウム)を用いた循環型建材を開発します。この建材を導入することで、日常的に微生物と触れ合い、免疫機能を向上させる環境の構築を狙います。プロトタイプとして、菌糸ブロックと紙管を組み合わせた軽量なパーテーションや休憩スペースを提案し、次世代シーケンサを用いた微生物のゲノム解析による実測評価も行う予定です。
講評では、非常にバランスがとれた高いプレゼンテーション能力が評価されました。将来の収益化の仕組みをより具体化する必要性や、他の建材と比較した上で菌糸でなければならない理由を科学的に示すことが求められました。


プロジェクト2|BeCAT × VATTEN BREWING
小国町ブルワリープロジェクト 大径木材を活用した建築のバリューチェーン分析

海江田理純

現代の木材流通において「負の産物」と見なされがちな大径木材に建築的な価値を見出し、その活用を促進するためのプロジェクト。
小国杉で有名な熊本県の小国町に、地元工務店と協力し、大径材を用いた宿泊施設を設計・建設します。大径材ならではの生命力あふれる空間体験の提供と、流通経路から外れている大径材の伐採、乾燥、搬出、建設に至るバリューチェーン(価値の連鎖)とコスト形成の実態を明らかにすることを目的とします。
講評では、大径材特有の面白い造形や「割れ」を活かしたデザイン、接合部や構造的な安定性の確保についてより具体的な検討が求められました。作業量には限界があるため、建設規模の適切な判断をすること、既存の施工方法と今回の手法の優位性の比較などの仮説を強めることも助言がありました。


プロジェクト3|BeCAT × 九州大学農学部演習林
生の松原 公園化プロジェクト

中村廉

九州大学の演習林でもある広大な防風保安林を、小規模な開発により、地域に開かれた都市公園に変えることを目指すプロジェクト。
多額の維持費がかかりながらも、利活用されていない演習林を、「長期的に」かつ「 小規模に」開発するためのフェーズ1として、カフェとビッグファニチャーの製作を計画します。まずは、地元住民の散歩道として親しまれている「けもの道」を軸に、ベンチやテーブルなどの家具を展開し、場所の付加価値を高めることを目指します。
講評では、松の材料特性や防風林としての歴史的・環境的価値のリサーチの甘さが指摘されました。まだまだ計画の抽象度が高いため、小さくてもよいから手を動かし、具体的な提案を一歩踏み出すことで、関係者との調整も進んでいくと励ましの声がかけられました。


プロジェクト4|BeCAT × 九州大学応用化学部門
TRANSLATING CHEMICAL RESEARCH INTO SPACE
Spatial Translation of Chitosan-Based Biomaterials in Temporary Pavilion Design

Festim Mulaku

バイオマスからメタノールへの化学的変換プロセスの研究を、建築的な空間体験へと翻訳するプロジェクト。
カニの殻などに含まれる天然高分子「キトサン」を紙の積層と組み合わせることで、軽量でありながら強度と耐久性を向上させた循環型パネルを開発します。炭素環構造をイメージした六角形パネルを採用し、構造的効率性とモジュール性の両立を目指します。パビリオンはキトサンパネル、竹フレーム、ボルト接合の3要素で構成され、容易に組み立て・解体できる構造とします。福岡市内の施設に展示し、来場者が科学的プロセスを追体験できる動線計画とします。
講評では、接合部の複雑さや実現性についての質問や、フレームなしで紙素材のみでつくる可能性についての提案がありました。人通りが多い場所に設置するため、安全性や強度の確保、また施設内に置くための火災安全性についても検討することが求められました。


プロジェクト5|BeCAT × 三菱地所
ストリートファーニチャー群の段階的設計介入による滞在行動の変容に関する研究
―因幡町通りにおける実証実験―

南天馬

再開発が進む福岡市天神に新たに開通する歩行者専用道路に、屋台型のストリートファーニチャーをおくことで、通りを「通過する空間」から「滞在する空間」へ変容させるための実証実験プロジェクト。
再開発工事の仮囲いとして使われていたCLTを再利用し、第一弾の屋台「KOKAGE」を作成し、時間帯に合わせて、Cafe, Market, Libraryと用途を変更しながら実験を進めています。7月の通り開通後、観察調査やアンケート調査、ロジスティック回帰分析や生存分析を用いて、家具の配置や囲われ感が滞在時間や交流にどのような影響を与えるかを客観的に評価します。
講評では、プロジェクトの実践的な進展が評価されました。ビル風や閉鎖感がある空間に設置するため、視覚的にインパクトのあるデザインや、ビルの上から見下す人の視点でデザインすることも都市デザインとして面白い要素になると助言がありました。持続的な活動にするために、スポンサーを獲得する仕組みをつくるなど、戦略的な視点もアドバイスされました。


プロジェクト6|BeCAT × 鹿児島県民
鹿児島仮設広場プロジェクト

大池岳+櫻木涼太

大型公共事業において計画関係者と一般利用者の間に生じるギャップや批判を解消するため、少しずつステップアップしながら一緒に作り上げる公共事業の在り方を提案するプロジェクト。
鹿児島のスポーツアリーナ建設に向けて、ステップアップとして、隣接地に3on3のバスケットコート、イベントやマルシェ会場、将来の完成予想図を示す展示スペースなどを設けた「仮設広場」を県民参加型で建設する。桜島が近いという立地条件を生かし、降灰環境における造形(風解析を用いた灰の堆積予測)や環境的なファサードが屋外空間の快適性に与える影響についての実測・研究も行う予定です。助成金やクラウドファンディングなどを使った資金調達を計画しています。
講評では、日本では珍しい「パブリックスペースを市民が自分で作る」という試み自体が非常に面白いと評価されました。ヨーロッパの事例を引き合いに、参加者が体験したいと思う価値や仕組みづくりの可能性が示唆されました。安全性や、鹿児島ならではの環境現象をデザインや研究にどう昇華させるかという点に期待が寄せられました。


プロジェクト7|BeCAT × 宗像みあれ芸術祭
海洋プラスチックを新たな建材へ「海を救い、街を豊かにする建築」を創る

シュレスターアカシ

世界で年間約800万t流出している海洋プラスチックを、年間約8000万tのプラスチックを使用する建設業界の資源として循環させることを目指すプロジェクト。
宗像大社の「みあれ芸術祭」において、海洋プラスチックをアップサイクルしたインフォメーションセンター(パビリオン)を制作・設置します。佐賀にある「世界海洋プラスチックプランニングセンター PLAPLA」の協力のもと、回収したプラスチックを粉砕・熱プレスし、600mm角のパネルを制作。これを鱗のように重ねたり、曲げたりすることで強度を確保し、海を想起させるアイコニックな造形を作ります。強度試験や紫外線暴露試験、異種混合による強度変化などの科学的な実測評価も並行して行います。
講評では、社会的意義の高さが認められた一方、実装に向けた技術面やビジョンについての指摘がありました。強風などに耐えうる強度を確保するため、フレームの組み方や接合部のディテールをより精緻に検討するよう助言されました。またパネルを単なる「外装の仕上げ」として貼るのではなく、プラスチック自体の特性を活かしてフレームなしで構造体を作るなど、建築的な挑戦も期待されました。


7プロジェクト、合計8名の学生とそのサポーター学生が、今回講評いただいたコメントから更なるブラッシュアップを経て、社会実装に向けて取り組みを進めます。

BeCAT 2026 応用プログラム企画提案会
日時|2026年4月24日 14時〜16時45分
場所|伊都キャンパスイースト1号館A-215教室

報告|梅崎真理子

RELATED ARTICLE